ごきげんいかがですか。高原剛一郎です。
子供の頃、夢中になって読んだ本に『グリム童話』があります。私はグリムという人が書いた本だとばかり思っていたんですが、大人になって、グリム兄弟が力を合わせて集めた昔話だと知りました。
グリム兄弟は六人兄弟で、長男のヤーコブと、次男のヴィルヘルムの二人が編纂したんですね。兄はこう言っています。「もし、弟がいなければ、地道な聞き取り作業は続かなかったでしょう。」弟はこう言っています。「もし、兄さんがいなければ、このように大きな仕事はできませんでした。なぜなら私は、体がひどく弱かったからです。」
弱い人でも、パートナーとして認め、励まし、力になってくれる人がいると、偉大な働きが出来るんですね。実は、バイブルが語る神は、人が弱いこと、小さな存在であること、また間違いを犯すものであることを、よーくご存知です。その上で私たちを用いて、偉大な人生に導くことがお出来になる方なんですね。何よりもまず、私たちの罪を赦してくださるお方なのです。
聖書の中に次のような祈りがあります。
主よ あなたがもし 不義に目を留められるなら 主よ だれが御前に立てるでしょう。しかし あなたが赦してくださるゆえに あなたは人に恐れられます。
ここから三つのポイントで福音をお伝えしましょう。
神がおられる
第一に、私たちの人生の全てをご存知の神がおられるということです。あなたはいかがですか。この世界をお造りになった大きな存在、あなたをお造りになった作者がおられるということに気づいていらっしゃいますか。
先日私は、長い間、無神論で生きて方がいかにして神を認めるようになったかというお話をお聞きしました。ある日のこと、いつものようにクリスチャンと論争していたそうです。「神などいるはずがない！」というふうに持論を展開していたそうです。そうしますと、古くからの友人でもあるクリスチャンが、「君は本当にそう考えているのか、それとも、そう考えていると思っているだけなのか。本心ではそう思っていないんじゃないか、心の深いところでは神がいると思ってるんじゃないのか。」と言われたそうです。
実は彼は、何度か九死に一生を得る経験をしていたんですね。その度に、駆け付けた救急隊員や警官から言われた言葉は「奇跡だ！」の一言です。「自分の本心を探っていくと、薄々、自分を生かしている大きな存在に気が付いてるということが分かった。これがターニングポイントになって、すぐに聖書を素直に読めるようになった」とおっしゃっていました。
神は確かにあなたに語り掛けておられる方なんですね。
クレジット会社のオペレーター
第二に創造主は不義に目を止めるのではなく、助けてくださる方なのです。不義とは罪のことです。もし神が、人の罪にのみ注目して問いただされるなら、人は皆、神から離れていかざるを得なくなります。
先日私は、クレジット会社でコールセンターに配属されたOLの手記を読んだのです。彼女の担当はキャッシング専用カードのお客さんです。多重債務者がたくさんいるタフな部門だったんですね。電話の先にいるのは、お客様という名の債務者なのです。誰も彼女からの電話を期待していません。いや、それどころか、あからさまな敵意を持っています。
電話で支払いの督促を告げるのですが、彼女はそこでビックリすることに気が付くんですね。それまで借金をしてる人というのは、みんな弱い人たちだと思っていたら、どうもそうではない。脅迫、暴言は日常茶飯で、「お前の会社に爆弾を送ったからな」そんな電話で返してくるそうです。実際段ボールが届いたときには、心臓が止まるんではないかと思ったと言いますが、中を開けてみるとキャベツが入っていたそうです。
罪と借金は似ている
中でも多いのがお説教です。「あなたね、こんなにも人を不愉快にさせるような仕事しない方がいいと思いますよ。世の中にはもっとまっとうな職業がたくさんあるでしょう。まじめに働きなさいよ。まじめに働くことだけを考えなさい。」まあ、そういう風にお説教されるって言うんですね。そんな電話を受け続けていると、オペレーターの心はズタズタになっていくそうです。
彼女も円形脱毛症になり、ボロボロになっていったんですね。しかし、そのような経験の中で彼女が一つ学んだこと、それは、人は追いつめられると攻撃的になるということでした。
罪というのは、ある意味借金に似てると思います。追い詰められた場合、身を亡ぼすか、やけくそになって攻撃的になることで自分を守ろうとするんではないですか。どちらも根本的な解決ではありませんね。もし神が、人の罪をただ攻め立てるだけであるとするなら、誰も神の前に悔い改めることは出来ません。
罪の許しに必要な犠牲
しかし、第三に、この方は私たちを赦す神です。罪を赦す神、それがあなたの作者である創造主です。聖書はこう言っています。「主よ しかし あなたが赦してくださるゆえに あなたは人に恐れられます。」
なぜ赦してくださる方を恐れるのでしょう。それは、私たちの罪は、神が莫大な犠牲を払うことによって初めて赦されるものであるからです。神は、あなたを赦したいがために、ご自分の一人子、イエス・キリストを十字架につけて、身代わりに裁かれるほどまでにあなたを赦したいと願い、あなたを愛してくださった方なのです。
中国の春秋時代に、管仲（かんちゅう）と鮑叔牙（ほうしゅくが）という政治家がいました。二人は少年時代から熱い友情で結ばれていたのです。ところが彼らは大人になり、王位争いから、二つの対立する陣営に分かれて、管仲の仕えていた君主は殺され、管仲自身も処刑されることになったのです。しかし、鮑叔牙は体を張って彼をかばい、そのため彼は助かるだけだけではなく、役職を与えられ、後に偉大な政治家になるのです。
恐れを抱かせる赦し
さて管仲は鮑叔牙にこんなことを言っています。「私たちが若かったころ、鮑叔と一緒に商売をしたとき、利益はいつも自分が余分に取ってた。しかし、君は何も言わなかった。私がひどく貧しいと知っていたからだ。また、私が戦に負けて逃げ出した時、君は私を『卑怯者だ！』と責めることは言わなかった。老いた母がいると知っていたからだ。私を生んでくれたのは父母だが、私を知って、私を愛してくれたのは鮑叔だ。」
その時、管仲は、このように深い愛情と、熱い友情と、そして何よりも忍耐と寛容を持って、自分に接し続けてくれた鮑叔牙に対して、敬う思いを持たずにおれませんでした。この敬う思いを、「恐れる」という言葉で表現するんですね。
神は、私たちがどれほど罪人であったとしても、決してあきらめない方です。なので、先程の祈りを語った人は言ったんです。「あなたが赦してくださるがゆえに あなたは人に恐れられます。」
人に恐れを抱かせるような赦し、それは、ご自分の一人子を犠牲にして初めて赦しを得られる、その救いの赦しでした。
どうぞ、あなたも、あなたを赦してくださる神のもとに、イエス・キリストによって立ち帰ってください。心からお勧めいたします。
（詩編130：3-4）
