ごきげんいかがですか。那須清志です。
昨年、アメリカの首都ワシントンDCにある聖書博物館「ミュージアム・オブ・ザ・バイブル」なるところに行ってきました。ここはアメリカ国会議事堂から歩いて数分という抜群の場所にあり、2017年にオープンしました。普通、博物館を造るには数億から数十億かかると言われていますが、なんとこの博物館の総工費は600億円以上と桁違いです。もちろん造ったのはクリスチャンたちですが、単なる宗教の宣伝機関ではなく、聖書そのものを客観的に学術的に紹介する、万人向けに造られています。グーテンベルグ聖書が刻まれた高さ12メートルを超える真鍮製の門をくぐると、豪華なロビーがあります。その天井は40メートルにも及ぶ液晶パネルでできていて、季節やイベントによってデザインを変えることができます。館内全体最先端の機器が使われ、今流行りのインタラクティブ、すなわち双方向でやり取りをしながら情報を得ることができます。展示が膨大なので、最初に何を学びたいか的を絞るようにとあったのですが、それに気づかず後の祭り。結局、丸一日7時間の開館時間をすべて使っても観つくせませんでした。今日は、この博物館の展示を三つのポイントで紹介しつつ、福音について考えていきます。
聖書が世界に与えた影響
第一に、聖書が世界に与えた影響についての展示です。
最初に大きく紹介されているのが自分たちの国、すなわちアメリカという国に与えた聖書の影響です。17世紀ピルグリム・ファーザーズと言われる100人ほどのイギリス人が、メイフラワー号という船で大西洋を渡ってきました。今のアメリカの始めです。旅人とも訳せるピルグリムの言葉も聖書からきたものです。そのほとんどがプロテスタントのクリスチャンで、信仰の自由を求めてやってきたのです。それ以降も独立戦争、奴隷制度廃止、市民権運動などの要所要所で、聖書と深く関わってきたことを豊富な資料を基に解説しています。
第6代大統領ジョン・クインシー・アダムズは次のように語っています。「世界中で聖書ほど絶え間なく研究され、深く黙想されている書物は他にない」。
政治と聖書のコーナーには、カーター大統領が使っていた聖書や、レーガン大統領の国家朝食祈祷会でのスピーチの原稿が展示されていました。
続いて音楽への影響。ゴスペルをはじめ、聖書と関わりある音楽を実際に聴くことができます。
職業への影響。さまざまな仕事に従事している人たちの聖書との出会いについて、証を実際に聴くことができます。
ファッションへの影響というコーナーもありました。ベルサーチやドルチェ&ガッバーナなどブランド品でも、聖書関連のモチーフがたくさん使われています。
医療、建築、文学、教育などその影響ははかり難く、まさに人類にインスピレーションをもたらした最大の書といえるでしょう。
聖書の成り立ち
第二に、聖書の成り立ちについての展示です。
今から、3500年前に書き始められたのが旧約聖書です。一番新しい部分の新約聖書でも、完成したのは今から2000年前。日本最古の書物が1300年前ですから、これまた桁違いです。これだけ長い期間であれば写し間違いや勝手に書き換えられることもあるのでは、と誰でも思うでしょう。しかし、聖書は驚くほど厳格に写され保存されてきました。現物を見せながら、そのことを紹介しているのがこのコーナーです。私たちが今、日本語で聖書を読めるのは翻訳されているからですが、翻訳の歴史についても語られています。ヘブライ語やギリシャ語で書かれた聖書がどのように、特に英語に訳されてきたかを、これまた現物を見ながら知ることができます。大きな楕円形の部屋があり、ぐるりと書棚で囲まれています。その書棚には世界の言語が書かれたケースが入っています。すでに訳されている言葉の聖書は実物が収められています。現在訳されている言葉、翻訳予定の言葉などは、ケースだけ置かれています。現在はコンピュータを使って翻訳もどんどん進み、スマホのアプリなどでいつでも、どこでも手軽に聖書の言葉にアクセスできるようになっています。10年もすれば、世界の99.9パーセントの人が新約聖書を自分の言葉で読むことができるようになるようです。そのコーナーの最初に、大きな印刷機を模したショーケースにスマホがちょこんと置かれているのが印象的でした。
聖書の記述は2000年前の事実
第三に、イエス時代の展示です。
2000年前の衣食住の様子を再現し、ぶどう酒やオリーブ油を作っている様子。ユダヤ人たちの集まっていた会堂を実物大で見せています。聖書は哲学者たちの机上の空論のようなものではなく、私たちの普段の生活に密着しているものであることを、あらためて考えさせられます。イエスが実在の人物であるということは周知の事実ですが、古い西洋の絵画などからのイメージではなく、考古学に基づいた展示は、聖書の世界やイエスの人となりを正しく知る上でこの上もなく有益です。
さて、この番組の名前は「聖書と福音」ですが、この世界で今もなお影響を与えている聖書の中に、福音、すなわち良い知らせが記されています。その福音について次のように新約聖書で語られています。特に聖書との関係について注意して味わってください。
あなたがたに最も大切なこととして伝えたのは、私も受けたことであって、次のことです。キリストは、聖書に書いてあるとおりに、私たちの罪のために死なれたこと、また、葬られたこと、また、聖書に書いてあるとおりに、三日目によみがえられたこと、また、ケファに現れ、それから十二弟子に現れたことです。
この箇所で同じ言い回しが出てきました。「聖書に書いてあるとおりに」です。ここでいう聖書とは旧約聖書のことです。イエスがこの地上に来られる400年以上前に完成していました。その聖書に書いてあるとおりの救いを完成させたのがイエスです。この救いは、イエスという立派な人が語ったものを与えるもの、というレベルをはるかに超えています。イエスが生まれる前から約束されてきた創造主の救いの計画を、イエスが完全に成し遂げられたのです。救いの完成といっても、当初は喜ばれたり賞賛されたものではありません。人々から蔑まれ、憎まれ、殺されました。でも、それが聖書に書いていることでした。十字架の死の後に起こったことは、三日後に死を突き破り、イエスが復活したことです。これは書いてるからといって、またそうしようと思って自分でできることではありません。イエスの復活は、創造主がイエスを救い主として認めているということの証拠です。聖書が世界に影響を与えているならば、聖書の中心主題であるイエスを救い主として受け入れ、信頼して歩むとき、あなたの人生に大きな変革をもたらします。それは時代を越えた永遠のいのちに至る祝福です。救い主イエスをぜひ受け入れてください。心からお勧めいたします。
(1コリント15:3-5)