#1065 ルーツに結ぶ仲介者


メッセンジャー似顔絵

ごきげんいかがですか。高原剛一郎です。

先日、思わずうなずいてしまったサラリーマン川柳を読みました。「万歩計 半分以上 探し物」同感しましたね。私の場合、人生の10分の1くらいは探し物につかっているような気がします。そして、何かをなくすのは私だけではないんだなあと、この川柳を読んで妙に安心したりもしました。
ところで、どこの鉄道会社も手を焼いているのが、忘れ物の保管場所だそうです。持ち込まれる量が半端ないからです。保管場所がいっぱいになるのは忘れ物が多いからではありません。なくしたものを取りに来る人が少ないからなんです。何かをなくした人々が、全員取りに来ていたら保管場所は空になるはずです。置き場所がなくなってしまうのは、なくしたものを探し求めてやってくる人が少ないからなんです。
ある時イエス・キリストはこう言われたのです。

人の子は、失われた者を捜して救うために来たのです。

これを語られたのは、堕落した町で、札付きの悪人と思われていた人物を神に導いた直後のことでした。「人の目にどんなにどうしようもない人も、神の目にはどうしても捜すことを諦め切れない存在と映っている」そのようにおっしゃったのです。

イギリスで起きた事件:児童移民

私は、先日、『からのゆりかご』という本を読んで大変衝撃を受けました。イギリスのノッテンガムという町のソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズという女性のレポートです。ある時から、自分のアイデンティティが分からずに悩んでいる人たちが、彼女のところによく相談に来るようになったと言うのです。
この人たちは、幼い頃、家族は全員死亡したと言われて施設に預けられた記憶を持つ人たちです。大きな船に乗せられて子どもばかりの所にいたという幼いころの記憶があります。たくさんの相談を聞きながら、それらの相談に一つ共通点があることに彼女は気が付きます。みんな物心ついた時にオーストラリアにいたというのです。
これは何かあるに違いない。マーガレットさんは地道に調査を始めました。その結果、衝撃の事実が明らかになったのです。実は、イギリスでは1970年代まで貧困家庭の子どもを預かる施設にいたその子どもたちが、福祉の名のもとにオーストラリアを筆頭として様々な国に移民として送り込まれ、過酷な労働を強いられ、残酷な虐待を受けていたという記録が出てきたのです。親の許可もないまま、ある時は親はもう死んでしまったからと偽って、色んな国々に移民に送り込まれた子どもたちが13万人もいたのです。なかには3歳未満の幼児もいました。おむつも変えてもらえず、常におしっこでぬれたマットレスで寝起きしていたというのです。
なぜそんなことをしたんでしょう。施設の維持に関わる公費の負担を減らし、そして、オーストラリアをはじめとする、それぞれ送り込んだ国々にただ同然の労働力を提供し、なおかつ人口比率においてイギリス系白人を優位に保つためであったというのです。大義名分としては、どうせ貧しいままイギリスに残っていても明るい将来はないだろう。現地に渡って農業を学べば、そこで人生が開かれることにもなろうというものです。しかし、親にも無断で、子どもには何の説明もなく、知る人が誰もいないところに送り出したのです。そこには里親制度はなく子どもばかりが一か所に集められ労働を強いられていたのです。私はこの事件を三つの立場から考えてみました。

神はあなたを探しておられる

第一に、突然施設からいなくなった子どもの親の立場です。彼らは30年たとうが40年たとうが親は子どもを探し求め、その消息を知るためにマーガレット助手のところにやってくるのです。傘や手袋ならなくしても取りに行かない人がいるでしょう。いくらでも代えがきくからです。
しかし、どうしても諦め切れないなくしものがあるのです。それは子どもです。代わりがいないからです。愛するものであるからです、人間の親に子どもを思う心をお与えになったのは神です。ならば神は、この地上のどんな親よりもあなたがご自分の魂の親である神のもとに帰るのを探し求めて待っておられるのではありませんか。もしあなたが神を知らないなら、あなたは神の目に失われた人です。いったい何が失われているのでしょう。神との関係が失われているのです。しかし、神はあなたを探し求めておられるのです。

あなたはなぜ生まれてきたのか

第二に、親を探す子どもの立場です。彼らは親は死んだと言われただけでそれを確かめるすべがありませんでした。そして、たとい本当に死んでいたとしても、自分の父や母はどんな人だったかを知りたいと願ったのです。なぜでしょう。実は自分のルーツを見失うことは、自分のアイデンティティをなくしてしまうことでもあるからです。彼らはみんな親とともに自分のことを探していたのです。私はいったい何者なんだろう。どうしてオーストラリアにいるんだろう。なぜお母さんは私を捨てたんだろう。いや、どうして私は生まれてきたんだろう。どうして私は生まれたのではない国にいて、そこで理由の分からない苦しみを味わっているんだろう。それが分からないことによって人生に踏ん張りがきかないのです。
あなたはなぜこの世に生まれてきたのか、自分自身に問うたことはありませんか。生きていたらしんどいこと、辛いこともたくさん出会いますね。何でそんな苦しみをしても生きて行かなければならないのかと疑問に思ったことはありませんか。なぜ生まれてきたのかを知ることで、いかに生きるかが決まってくるのです。
神はあなたを愛して造られました。そして、あなたは神の栄光を表すために造られたのです。この創造主なる神こそ、あなたの人生の意味であり、スタートであり、根拠なのです。

あなたと神を結びつけるキリスト

第三に、親子を結びつけるソーシャルワーカーの立場です。オーストラリアに渡った子どもたちは、出生証明書も証拠書類の類も持っていませんでした。手紙もない、写真もない、いや親の名前も覚えていない子が多かったのです。この人たちを過去と結びつけるのは、おぼろげになった過去の記憶だけなのです。自分の力だけではどうやってもルーツにたどり着くことができない人たちなのです。
だからこそルーツに結び付けるソーシャルワーカーが必要だったのです。マーガレット女史は、この活動に取り組むにつれ国家機関から妨害され、やがて脅迫を受けるようになります。それでも、ルーツを知り、結びつきたいという人間が持つ根源的な欲求のために彼女は体を張っていくんですね。
キリストはそれ以上のことをされました。あなたのルーツである神とあなたを結びつけるために、十字架の上で死んでくださったのです。ご自分の意思でいのちを捨て、そして、三日目に復活することで神と人との壁である罪を取り除かれたのです。どうぞあなたもイエス・キリストを信じ、本当のあなたのルーツに立ち返ってください。心からお勧めいたします。


使用CDジャケット
小坂 忠:小羊イエスよ

今日のみことば
人の子は、失われた者を捜して救うために来たのです。
(ルカ19:10)