ごきげんいかがですか。高原剛一郎です。
さて今年の一月、あるドキュメンタリー映画が全国上映され、話題となっていました。「ＧＯＧＯ（ゴゴ）９４歳の小学生」という映画です。
ゴゴというのは、ケニアのカレンジン語で、おばあちゃんという意味なんですね。主人公はプリシラ・ステナイという９４歳の助産師のおばあちゃんです。若くして結婚し、３２歳で未亡人となりますが、３人の子どもがいました。この３人の子どもから２２人の孫と５２人のひ孫が生まれるのです。
ところがある日のこと、学齢期のひ孫たちが小学校に通っていないということを知ったゴゴは、それをたいへん悲しむんですね。というのは自分も幼い頃、小学校に通っていなかったからです。牛の世話をする人が要るという理由で彼女の両親は彼女を小学校に行かせませんでした。その結果読み書きができないまま、９０歳を越えたのです。それは本当に不便不自由極まりないことであったんです。名前を書くときはいっつも、人に書いてもらわなければならなかったからです。
そこで一念発起した彼女は、６人のひ孫とともに自らも小学生としてやり直すことにするんですね。他の生徒たちと同じように寄宿舎で寝起きします。先生たちは全員自分が産婆としてとりあげた人ばかりです。片目は完全失明し、もう片方の目も見えづらく、そして耳も遠いんですが、一生懸命勉強に励み、とうとう卒業試験にこぎ着けるまでのドキュメンタリー映画です。
ところでゴゴさんは、どうしてそんな苦労をして勉強を取り組もうとがんばったんでしょう。それはどうしても読みたい本があったからです。それは、聖書です。彼女はクリスチャンなんですね。単純にイエス・キリストを救い主として信じています。でも人に読んでもらわない限り、自分で聖書を知ることはできません。聖書を通して、自分の造り主の心に触れたい、もっともっとイエス・キリストのことを知りたいという一心で、彼女は言葉をマスターしようとがんばったんですね。
詩篇１３９篇１５，１６節
さあ、この聖書の中に次のようなことばがあります。
私が隠れた所で造られ
地の深い所で織り上げられたとき
私の骨組みはあなたに隠れてはいませんでした。
あなたの目は胎児の私を見られ
あなたの書物にすべてが記されました。
私のために作られた日々が
しかも その一日もないうちに。
これはダビデという王様が自分の造り主を思って謳った、祈りの歌です。
ここから三つのポイントでお話しましょう。
DNAの二重らせん構造
第一に、人間は創造主によって造られた、ということです。
この箇所では、母親の子宮という隠れた所で造った、と言った後で、再び別の表現で言い換えています。それは、地の深い所で織り上げられた、というのです。この織り上げる、ということばは、ラカウというヘブライ語です。それは、より糸を作る時に用いられる言葉なんです。より糸というのは２本の糸をねじって、こよりのようにひねり合わせて一本の太い糸に仕上げた糸のことですね。
ところで人間の身体は一つの受精卵が細胞分裂を繰り返し、やがて完全な人間の身体に仕上がっていきます。そのとき各部分の器官にみごとに分化していけるのは、ＤＮＡに記された遺伝情報に基づいて、細胞が分裂していくからです。いわば人間のＤＮＡという設計図を基に造り上げられた作品、それが人間だということができるでしょう。そしてこのＤＮＡは二重らせん構造になっているのです。いわば、より糸の形態をしているのです。つまり二重らせん構造のＤＮＡ情報に基づいて、細胞分裂し胎児となっていくことを、地の深い所で織り上げられたと表現しているとも読めるんですね。
あなたの創造に目的がある
第ニに、神は胎児の時からあなたをじっと見て注目し、誕生する前に、誕生から死ぬ日までの期間のすべてをご覧になった上で、あなたのことを詳細に設計されたというのです。
神はあなたの血液型、肌の色、髪の毛の色、体質、その他すべての特徴を慎重に決定されたのです。神の深い考えがあって、あなたをあなたのかたちに造られたのです。と同時に、あなたの才能と人格を造ってくださったのです。それは神の目的を果たすためです。
神はあなたに目的を持っておられます。なぜあなたは日本に生まれ、昭和に生まれ、あるいは平成に生まれ、男に生まれ、女に生まれ、この家族の中に生まれたんでしょう。深淵な神の目的のためにそれが必要なことであったからです。神から離れている時には、その深淵な目的がわかりません。したがって自分の姿かたちや自分であることに不満を持つ方がいらっしゃるかもしれません。しかし目的があって、あなたはあなたに造られているのです。
造られたものの価値
第三に、神があなたの作者であられるが故に、あなたには価値と意味があるということです。
私は先日、「最後のダヴィンチの真実」という本を読みました。これは現存するダヴィンチの最後の絵と言われるキリストの肖像画「サルバトール・ムンディ」をめぐる物語です。実は当初、ロバート・サイモンという画商がこの絵を購入した時、１８万円だったんですね。それが最終的にいくらで売れたんでしょう。５７０億円です。これは美術史上、最も高額な価格です。買ったのは、サウジアラビアのムハンマド皇太子です。
ところでどうしてこんなに価格が跳ね上がったんでしょう。ロバート・サイモンがこの絵を入手した時、実は世の中にダヴィンチの偽物が多数出回っていたんですね。それでこの絵も贋作の一つに違いないと疑われてしまったんです。しかし彼はこの絵を、ダヴィンチ作品の修復を専門にしているモデスティーニという人に依頼したのです。モデスティーニはこの作品の修復に一年以上費やしましたが、口元の作業をしている時に、ダヴィンチのモナ・リザとの決定的な共通項を発見してしまうんです。二つの唇を見比べていると、レオナルド・ダヴィンチ以外にこんな風に描く人はいない、ということに気づくんですね。つまりこの１８万円の古ぼけた絵は紛れもなく、レオナルド・ダヴィンチ最後の一枚だと、証明されたのです。
しかもその後、チャールズ一世が一枚だけダヴィンチ作品を持っていたということが古文書で発見されます。そしてその作品こそ「サルバトール・ムンディ」だったのでした。つまりこの作品はダヴィンチ作品であり、チャールズ一世、チャールズ二世、ジェームズ二世が保有していたということが発覚したのです。美術品の価値ていうのは、巨匠の作品であるということの証明と、歴史的人物たちのコレクションだったいうことがはっきりすることで、決定的に定まるそうです。このことが１８万円が５７０億円に大化けしたことの理由であったのです。
ところで、あなたをお造りになった巨匠は、どなたですか。あなたは誰によって愛され、造られたのでしょう。この世界をお造りになった創造主なのです。なのであなたには、価値があるのです。
神はあなたという失われた作品を、今日も探し続けておられる方です。どうぞイエス・キリストを通して、あなたの作者の元に帰ってください。心からお勧めいたします。
地の深い所で織り上げられたとき
私の骨組みはあなたに隠れてはいませんでした。
あなたの目は胎児の私を見られ
あなたの書物にすべてが記されました。
私のために作られた日々が
しかも その一日もないうちに。
（詩篇139：15-16）
