旧約聖書
「わたしは、あなたを胎内に形造る前から、あなたを知り、あなたが腹から出る前から、あなたを聖別し、あなたを国々への預言者と定めていた。」
(エレミヤ1:5)

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「聖書と福音」高原剛一郎

No.633 2012年5月13日

「創造主の心に触れる」

おはようございます。高原剛一郎です!

 さて、中国最初の歴史物語に史記という本があります。このなかに四面楚歌という言葉が出てまいります。かつて、絶大なる力を持った項羽が、ライバル劉邦に攻め込まれるんですね。崖下に立て籠もる項羽の軍隊を意気消沈させるために劉邦は一計を案じます。それは、自分の率いる漢の兵隊に項羽の故郷の歌を歌わせ、とうとう自分の故郷の民までもが、劉邦側に寝返ったのかと思い込ませるというたくらみです。この作戦は見事に成功しました。天才的君主の項羽でしたが、味方となってくれる同国人からも、見捨てられてしまったのかと思い込んだとき、思考は停止、気力も闘志も衰えはて、もはやなすすべもなくなってしまうのです。彼は戦わずして敗北してしまうんですね。それは、敵の吹聴する嘘にまんまとひっかかってしまったからです。心がおれたら、やれることすら、できなくなってしまうんですね。


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 ところで、私たちも同じように東西南北、四面の全部から、否定的、破壊的メッセージをずーっと聞かされていくならば、どんな人でも最後は、心が折れ、生きる気力を失い、できたはずのことをしようともしなくなってしまうんじゃないでしょうか。ところが、この世間から流れ聞こえてくるメッセージは、本当に後ろ向きの暗い話が多いのではありませんか。生い立ちがひどいと、ひどい大人になるとか、老人になってから、人生のやり直しは無理だとか。まあ、聞いていると本当にうんざりします。しかし、たとえ四面が、否定的メッセージを呼びかけても、天井はあいているんですね。この天からのことばは、人に生きる勇気を与えるいのちなのです。この天におられる神、この天地万物をお造りになった創造主の言葉をご紹介いたしましょう。


「わたしは、あなたを胎内に形作る前から、あなたを知っていた。」

 これは今から、二千六百年ほど前に活躍した、ユダヤの預言者エレミヤという人物に語られた言葉です。三つのポイントで語られています。

あなたの存在は神による奇蹟の結晶

 第一にこの方は、私たちを、母の胎内の中で形作られたあなたの作者です。私たちは、お母さんのおなか中で成長し、九か月で出てくるんですが、これは本当に、幾重もの奇跡の積み重ねなんだそうです。
 人間の体は、自分の細胞と他人の物を区別するという能力があります。自分に由来しないものは免疫システムが働いて撃退してくるんですね。ですから、臓器移植した方は、体の中にある他人の臓器を守るために、免疫システムを抑える薬を一生涯飲み続けなければなりません。ところが唯一の例外が精子なんです。女性の体内に精子が入った時、体はそれをウイルスや外敵のように撃退しません。それを受け入れるように設計されているんです。一つの命が誕生するには、一つの精子と一つの排卵された卵子が出会わなければなりません。受精においては二千万から四千万の精子が、たった一つの卵子を目指して壮絶な競争を繰り広げます。二千万倍以上の倍率を勝ち抜く精子の優秀さは素晴らしいんですが、卵子のほうもとびっきりの選りすぐりなんですね。
 女性が、妊娠可能期間に排卵する卵子は、一生に約五百個です。実は、この五百個が厳選されたもんなんですね。というのは、思春期前後には、三十万個の卵があるのですが、そこからたった五百個が、一個づつでてくるんです。その中の一つが命になるんですね。しかも妊娠二十週めの女性のお腹の中にいる胎児が、女の子の場合、その胎児の卵巣の中には、すでに、七百万個の卵があるんです。これが、出生までに、百万から二百万個に選別され、さらに思春期に三十万個が選ばれるんです。つまり、妊娠した女性はすでに孫の素材を宿しているのです。受精卵はたった、0.2ミリです。この中に、今のあなたになるものが全部秘められていたんですね。

全知全能の創造主が最善の聞き手

 第二に、神はあなたをよく知っておられる方だということです。私たちは自分を一番よく知っているのは自分だと思っています。しかし本人ですら気づいていないその人の良さ、才能、感性、埋もれたままになっている能力を神は、よくご存じの方なのです。なぜなら、設計者であるからです。
 先日ある集会にとても無口なご夫婦が来られました。メッセージが終わるとすぐに席を立たれたので、私は、お茶だけでも一杯どうぞと勧めたのです。しかし、結構ですと、手で合図をなさるんですね。それでも少し話しかけると、私が以前勤務していた会社と関係しているお仕事だということがわかりました。立ったまま十五分間話したんですが、そのうち奥様がつかれたと言って椅子に座られ、今度はご夫婦が話す番になりました。終わったのは三時間後です。ご主人が言いました。こんなにしゃべったのは久しぶりだなあ。実は無口な人ほど、ちゃんとした聞き手を得ると話は長くなるものなのです。無口だと自分では思っていても、実は、そうではないということがあるんですね。そして、神様は人の隠れた本音を聞き取って、応えて、正しい道に導いていかれる最善の聞き手でもあるお方なのです。

私たちの存在そのものを喜ばれる神

 第三に、この方は生まれる前から私を知り、待ち望んでいてくださった方だということです。
 長年児童相談所でカウンセラーとして活動してこられた青木和雄さんという方が今までの面談経験を材料にしてある小説を書かれました。「ハッピーバースデー」という作品です。主人公の女の子、あすかはある日を境に声が出なくなってしまいます。きっかけはお母さんの言葉でした。その日は飛鳥の誕生日だったのです。しかし、兄の直人が言うんです。「かけてもいいぜ、ママはお前の誕生日なんかすっかり忘れているよ。」「そんなことないよ。ママは飛鳥の誕生日を忘れたりしないよ。」「でも、おまえさあ、算数のテスト二十点だったんだってなあ。そんな馬鹿な子は、生まなきゃよかったってママ言ってたぞ。」明日香はコップの水をお兄さんにぶっかけると、泣きながら自分の部屋に駆け込み、いつの間にか眠ってしまうのです。しかし、深夜ふと目を覚ますと、お兄さんと母親の話し声が漏れ聞こえてくるんです。「今日さあ、あいつに水をぶっかけられてさあ。」「まあ、そんなひどいことを、明日香ってホントどうしようもない子だよね。」お酒が入った母親は普段より大きい声になっているんです。「そうだよ、ママが飛鳥の誕生日を忘れたからって、なんで僕がこんな目に合わなきゃなんないんだ。」「ああ、そっか、今日だったんだ飛鳥の誕生日。」「やっぱり忘れてんだね。」「うん、だって仕方ないでしょ。明日香って何をやらしてもだめで。ほんと、産まなきゃよかったよ。」それを聞いていた明日香は、「ひどい、ひどすぎる」と言ったのですが、声が出なくなっていたんです。

あなたに与えられた計画がある

 万が一こんな母親に育てられた方がおられたとしたら、どうぞ聞いてください。たとえ、人間の両親が、あなたを望んでいなかったとしても、創造主があなたをお望みになったのです。たとえ、人間の両親にとって計画外の子どもであっても、創造主はあなたにご計画を持って造られたのです。なぜなんでしょう。神はあなたを愛しておられるからです。どうぞ、この神の言葉、聖書によって、あなたの造り主を知ってください。心からお勧めします。

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