世界中どこでも、いつでもラジオ関西「聖書と福音」の聖書メッセージが聴ける(Web Radio) ウェビオ

Bible & Gospel

No.541 2010年08月08日 「父母を捨ててキリストに従う」

おはようございます。高原剛一郎です!

 愛知県の岡崎市にある研究所で、人間の生理反応についておもしろい実験結果が出ました。実は人間ってお金をもらうと脳が活性化するっていうんですね。特に大脳の活動領という部分が元気になります。ところが、お金をもらうのと勝るとも劣らぬ反応を起こすものがあるんです。それは、励ましのことばを聞くことなんです。勇気づけられることばを聞くと、お金をもらったときと同じ領域が、猛烈に活発化するんですね。

励ましのことばを聞くと脳がハッスル

 この研究所では、MRIという装置を付けた男女19人にカードゲームをしてもらいました。MRIっていうのは、脳の活動を一目瞭然で観察する機械です。ゲームに勝ってお金をもらうと脳が喜んでるのがよく分かるんですね。しかし、同時に「さすがだね−」「読みが深いねー」「きれいな勝ち方だねー」などと励ましのことばを聞くと、勝ち負けを越えて脳がハッスルしてくるって言うんですね。
 この番組ではリスナーの皆さんにお金を差し上げることはありません。しかし、脳にも心にもいのちを与えることば、神のことばをお届けしたいと思っています。

聖書の中の驚くべきことば

 ところで、聖書の中には「なるほどなー」と思う名言もあれば、一見、耳を疑うようなことばも時々登場してくるんです。

 ある時、キリストは弟子たちに向かってこうおっしゃったんです。
 イエスは言われた。「まことにあなたがたに告げます。わたしのためにまた福音のために家、兄弟、姉妹、母、父、子、畑を捨てたもので、その百倍を受けないものはありません。」
 なんということでしょう。キリストは私のために父も母も、捨てて従えって言っているんでしょうか。そうおっしゃってるんです。これは大変危険な考えと思いませんか。一歩間違うとわがまま息子の反抗を正当化するのに悪用されかねません。更には家族崩壊、一家がばらばらになることを勧めているかのように、誤解されかねないのです。どうしてキリストは父、母、家族を捨てて、キリストに従えとおっしゃったんでしょう。父母の中には、理想的な父母だけではなく、やっかいな父母がたくさんいることをご存じであったからだと思うのです。理想的な父母ってなんでしょう。それは、息子、娘たちが自分から離れて自立していくことを快く許す父母のことです。

世界犯罪白書

 私は先日、世界犯罪白書というデータを見てびっくりしました。そこには殺人事件の犯人像が記されていたのですが、それによると国の貧富の差にかかわらず、殺人事件の4割は家族間で起こっていると言うことです。家族ってうまく機能しているときには、地上の天国のような場になりますが、こじれた家族って、地上で最も居心地の悪い、人間の醜さが際だつ関係になってしまうんです。
 殺人事件にまで発展しなくても、実にたくさんの人が、家族関係が原因で人生が重苦しくなっているんです。すでに父、母が亡くなって、何年も経っているのにその父母に植え付けられた傷に、立ち上がれない人が、私の友人の中にもたくさんいます。かくいう私自身も身内に対しては他の人に対するより、忍耐力がありません。ついけちを付けたくなるんですね。こうあって欲しいという願いがものすごく強いんです。しかし、その願いは一見愛のように見えて、支配なのです。

 ところで、聖書の原則は、父母を敬えです。先日ある方に教えていただきました。この敬うということばは、重んじるという意味と同時に計るという意味があるそうです。両親の伝えたことの中で、重要なことは受け入れよ。しかし、そうでないものは取り入れなくても良いという意味です。

バーバラ・ロゴフの自由の味

 私は先日、バーバラ・ロゴフという女性の書いたエッセイを読んだんです。自由の味というタイトルです。彼女は長い間、父親から肉体的、精神的、また性的に、虐待を受け続けてきました。だから、恐怖の対象である父親が「俺の仕事の手伝いをしろ」と命じたとき、はいとしか言えなかったのです。その仕事とは、書類に彼女のサインをすることです。しかし、その書類は金融詐欺の書類だったのです。数ヶ月後、FBIが突然やって来ました。そして彼女にこれはあなたのサインかと尋問したのです。「はい」と答えると、すぐさま厳重警備の刑務所にぶち込まれてしまったのです。何が何だか訳の分からないうちに、彼女は金融詐欺事件の主犯になっていたのです。

成人向けの更正プログラム

 しかし、この刑務所に入るとき、アメリカ政府は、成人向けの更正プログラムを受けるように命じたのです。そのプログラムの中で、長年に亘って虐待を受けて来たものたちには、どんなに酷い後遺症が表れるのか、しかし、どんなに辛い経験も必ずいやすことが出来るのだ。ということを学ぶのです。
 そして彼女はそこで、聖書のことばと出会うのです。カウンセラーがクリスチャンだったんですね。実は彼女はいつも不眠に苦しんでいました。いつも何かに追いかけられているような心理状態です。それは自分の弱さであると知りました。それで原点に帰り続ける努力をしたんです。原点とは何でしょう。私はわけもなく生まれたのではない。賢い神が私を造って下さったんだ。素晴らしい神さまの作品なんだ。親切な神さまから愛されるために造られたんだ。

聖書のことばで癒されていった

 しかし、彼女は何かするとき、いつも心の中から父親の声が聞こえてくるんです。「お前なんかゴミだ。お前なんかくずだ。生まれなかった方が良かったのだ。」でも、それが聞こえてくる度に、聖書のことばでそのメッセージを置き換えるように努力したんです。神さまは聖書を通し、こうおっしゃるんですね。「わたしの目にあなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。あなたはわたしの愛しい子供だ。あなたの汚れた過去や罪は、キリストがすべて洗って下さった。父母を捨ててわたしに従え。」来る日も来る日も、繰り返し繰り返し、自分に言い聞かせたのです。人が私に語ったことばではなく、神が私に語られたことばを思い巡らし続けたのです。そうしている内に、ゆっくりと癒されていったんですね。

レキシントン刑務所に移動

 ところが、またしてもショッキングなことがありました。せっかく聖書を学べるプログラムにいたのに、彼女のいた刑務所が定員オーバーになったため、彼女はレキシントン刑務所に移らなければならなくなったのです。この刑務所は全米でも凶悪犯が収容されることで有名な刑務所だったのです。しかし、彼女はここでも、神さまの愛と配慮を知るのです。彼女の看守ミスター・リヤ−が大変な人格者だったんですね。彼は彼女に人生に役に立つことや、希望を語り続けてくれました。皮肉ったり侮辱したりすることが一度もないのです。彼女の父親が服役もせず、証拠不十分で無罪のまま、世間でのうのうと生きているのを聞いたときには、まるで自分のことのように彼は憤慨してくれたのです。

人の心を満たす完全な赦し

 そんな彼がある日のこと、ロゴフを怒鳴りつけていったんです。「すぐに私の執務室を掃除してこい。棚のもの一点残らず片付けてしまうまで戻ってくるんじゃないぞ−。」彼女はショックでしたが部屋に入ってよく見ると棚の上に大きい完熟のトマトが置いてあるのです。それは彼女が食べたいなあと以前もらしたものです。そのトマトは一生で一番おいしいトマトのように感じたのでした。一見恐ろしく見える態度の中にも親切がこもっていたのです。

 キリストの十字架は恐ろしい処刑です。しかし、この中にこそ、人の心を満たす完全な赦しがあるんです。どうぞあなたの真の父母である神の元に、何があっても従ってこの方を信じ受け入れて下さい。心からお勧めしたいと思います。


西 由紀子:アメイジング・グレイス
新約聖書 ルカの福音書23:42-43
 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」